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名刺の棚卸

2026年7月1日。ジークス創業40年。
この40年で手元にある名刺は1万枚近い。初期の頃の名刺にはメールアドレスや携帯電話の番号の記載もなく、会社の電話番号も9桁だ。
昭和天皇の崩御とバブルの崩壊の頃出会った人。
阪神大震災と9.11のテロを共に嘆いた人。
リーマンショックからの東北大震災で日本の行く先に不安を抱いた人。
明けぬコロナ禍で上を見上げられなかった頃、励ましあった人。
(なんか悪いことのほうが記憶に残るのかね)
名刺は単なる連絡先ではなく、自分が歩いてきた時間そのものだった。

去年からジークスはUNIVAグループの事業会社と業務提携をして事業領域を広げる試みを続けている。
UNIVA JapanのESCO-ONEやUNIVA Gyro-nのデジタルツールの営業をしている。
現業の広告事業とは異なるパイプラインの開拓の必要がある。
過去の膨大な名刺に目を通してみた。
最初は「人脈の棚卸」のつもりだった。
誰に連絡できるか、どんな業界につながりがあるかを整理し、新しい事業に役立てようと思っていた。
しかし、作業を進めるうちに、思いがけない楽しさが生まれてきた。

「久しぶりです。お元気ですか」
軽い気持ちで送ったメールに、すぐ返信が届く。
「懐かしいですね。ぜひ会いましょう」
何十年も会っていなかったのに、不思議と昨日の続きのように会話が始まる。
互いに歳を重ね、立場も変わったが、昔共有した時間は簡単には消えないらしい。
ある人は現役を退き、地方で若者支援をしていた。
ある人は海外生活を経て、新しい分野に挑戦していた。
またある人は、病気を乗り越えて穏やかな表情になっていた。

不思議なのは、長い年月が空いていても、一度築いた信頼関係は意外なほど残っていることだ。
近況を語り合ううちに、昔よりも深い話ができることさえある。
若い頃は仕事の成果や立場に目が向きがちだったが、今は人生そのものについて語り合える。
そして、そこから新たな出会いも生まれる。
「面白いことを始めるなら紹介したい人がいる」
「そのテーマなら協力できるかもしれない」
再会を重ねるうちに、「人脈」という言葉の少し冷たい響きが気になり始めた。
人は資源ではない。効率よく使うものでもない。
本当に価値があるのは、長い年月の中で細くても切れずに続いていた“縁”なのだと思うようになった。
まさにグループが掲げる「人財」なのだ。

名刺の棚卸は過去を振り返る作業だと思っていた。しかし実際には違った。
過去を整理することで、未来への扉が次々と開いていくのである。
若い頃は新しい人との出会いに価値を見いだしていた。
今でも新たな出会いは楽しく豊かな体験であるけど、
かつてのご縁が再びつながり、新しい形で花開くことに大きな喜びを感じる。

広げ始めたジークスの事業領域がどのような成長を続けるのか、まだ分からない。
けれど、一つだけ確かなことがある。
新しい挑戦は、決して一人では始まらないということだ。

株式会社ジーク
代表取締役 中谷 文明

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