MESSAGE
未体験New Horizon
最近ラジオでモーゼスおばあさんの展覧会のスポットがおびただしく流れ、滅多に美術館などに足を運ぶことはないのだが、なぜか魅かれるものがあり「GRANDMA MOSES展」に行ってきた。夫と次女に先立たれた70代から絵筆を握りはじめ101歳で逝去するまでアメリカの現風景のような温かい絵を描き続けたそうだ。決して美術界から評価されたわけではないらしいが、市井の人々の心をとらえ人気を博していたらしい。
UNI-SIGHTの辣腕編集長のJUAN女史に問い合わせたところ、UNIVA CAPITALグループに所属するNAKAMAの平均年齢は38.2歳らしい。今回のメッセージは多くのNAKAMAには共感度は低いかもしれないが、一部の同世代には喫緊の課題として興味を持っていただけるかもしれない。稲葉会長は今年で還暦を迎える。かくいうワタクシも来年で還暦だ。
仕事を始めた1986年は戦後の高度経済成長を経験し、オイルショックを経て、バブル経済崩壊までカウントダウン。企業の終身雇用もテッパンで、定年は一様に60歳。年金に関する不安もなく、総じて10年超の穏やかな余生を楽しみ、静かに人生の幕を閉じるというのがステレオタイプであった。人生80年が共通認識だった。
それから35年後の2022年現在、医療の進化なのかライフルスタイルの変化なのか、人生100年時代といわれている。厚生労働省も「人生100年時代構想会議」を立ち上げ新しい日本の在り方を模索している。2007年以降に生まれた子供の半数は107歳まで生きるという推計もあるらしい。年を重ねるということが日本人にとって未経験のゾーン、新たなる体験になっている。
というわけで冒頭のモーゼスおばあさんも稀有人ではなくなるかもしれない。やなせたかし氏がアンパンマンを書き始めたのは54歳で、ヒットしてアニメ放送が始まったのが69歳の時、94歳で亡くなるまで創作活動を続けたらしい。「人生50年」と言われた江戸時代、伊能忠敬が隠居生活をやめて日本測量を始めたのは55歳の時、71歳までその旅を続け精度の高い日本地図を完成させた。
絵心も健脚でもないワタクシとしてはどないにエイジングしていこうかと逡巡してしまう。
人間は社会的動物であり、何らかのカタチで社会参加していないと生きていけない。少なくとも自分はそうだ。晴耕雨読という芸風ではないし、自粛期間中に堪能した配信系サブスクも読書三昧も三カ月で飽きる。時間を忘れて没頭できる趣味も持ち合わせていないし、社会貢献はしたいと思うもののボランティアに心血を注ぐ自分は想像しがたい。仕事を通じて社会参加して得た人間関係は功利のみならず、希少で愛でたいことが多い。
基本的に仕事を通じて多種多様な経験を積んできたつもりではあるが、振り返れば仕事という名の井戸の中の蛙なのかと当惑しかける。いやいや、そうだとしても勇気をもって前に進もう。世の中には便利な言葉がある。
「荘子」に出てくる「井の中の蛙大海を知らず」に日本であと付けされたものだ。
「井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る」という。うん、いいな。
こんな句もある。「井の中の蛙 大海しらねども 花は散りこみ月は差し込む」
うん!言葉にはチカラがあるな。
仕事の本質は人を幸せにすることだという。ならば命尽きるまで仕事という井戸の中で思い切り泳ぎ続けるのも悪くない。
株式会社ジークス代表取締役
中谷 文明